映画「世にも怪奇な物語」パンフ

特異な作風で知られるエドガー・アラン・ポーの怪奇と幻想の世界を、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3監督が、それぞれの個性とスタイルを生かして映画化したオムニバスの3作品です。

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原題/HISTOIRES EXTRAORDINAIRES
製作/1967年
公開/1969年 フランス映画 121分

『第一部(中世篇)黒馬の哭く館』
短編「メッツェンゲルシュタイン」(1832年)から題を取り、焼死した男爵の魂が黒馬に乗り移り、美女を死の世界へ連れ去るという、霊魂の再生・輪廻をもとにしている作品。

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〈ストーリー〉
美しい女性伯爵フレデリックと若い男爵ウィルヘルムの二人は、血縁でありながら過去何世紀にもわたって宿敵の間柄にあるメッツェンゲルシュタイン伯爵家と、ベルリフォジング男爵家の憎悪の継続者だった。
22歳の若さで、国中に並ぶ者のない莫大な財産を相続したフレデリックは、尊大で気まぐれな性格に任せて享楽生活を送っていた。彼女は明け方に見た悪夢を忘れるため、幼少時代を過ごした古城に向けて、貴族や召使いたちを引き連れて出発した。
城の広間では夜ごとに悦楽の宴が繰り広げられたが、ただ一人だけ無関心な態度をとる男が近くに住んでいた。伯爵領に隣接する土地の、宿怨の分家ベルリフォジング男爵家の当主ウィルヘルムだ。彼の生きがいは愛馬と狩猟に行くことであり、他のことには無関心だった。
ある日、遠乗りに出たフレデリックは、森の中で馬から降りた拍子に、ウィルヘルムの仕掛けたキツネの罠に足首が挟まれる。助けを求める叫びに駆けつけたのがウィルヘルム男爵だった。それからフレデリックはウィルヘルムに恋心が芽生えた。それで彼女は大胆にも、誇りを抑えて彼を誘ったが、男爵の方は愛馬にのみ関心を寄せ、静かに断ち去ったのだ。無残に心を傷つけられたフレデリックは、怒りのあまり家来に命じてウィルヘルムの厩舎に放火させた。男爵は愛馬を助けようと炎の中に飛び込み二度と戻らなかった...。
同じ頃、フレデリックの城に一頭の黒馬が駆け込んできて暴れまわっていた。噂では、燃え落ちる寸前のウィルヘルムの厩舎から突如現われた馬で、誰も以前に見たことがないという。黒馬はフレデリックが手を差し伸べると急に静まった。その時、ウィルヘルム焼死の知らせが入った。また城内では代々伯爵家に伝わった合戦の図の壁掛けが焼けて中央の黒馬の部分が消失したという...。

原題/METZENGERSTEIN
監督/ロジェ・ヴァディム     (第一部)
原作/エドガー・アラン・ポー
   『メッツェンゲルシュタイン』(第一部)
脚本/ロジェ・ヴァディム     (第一部)
   パスカル・クーザン     (第一部)

出演/ジェーン・フォンダ
    :フレデリック・メッツェンゲルシュタイン/女伯爵
   ピーター・フォンダ
    :ウィルヘルム・ベルリフォジング/男爵


『第二部(近代篇)影を殺した男』
短編の中で有名な「ウィリアム・ウィルソン」(1839年)による映画化。「ジキル博士とハイド氏」を始め二重人格を扱った作品は多いが、ポーの作品では善玉が殺される。姓名・容姿の同じ二人のウィルソンがおり、サディスティックなウィルソンの悪事が完遂される寸前に理知的で道徳的な同姓者に邪魔され、ついに相手を刺殺するが、影の死は本体の死をも意味していたという物語。

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〈ストーリー〉
19世紀、オーストリア占領下の北イタリアで、ひとりの若い将校が恐怖にゆがんだ顔つきをして、とある教会に走り込んできた。そして司祭に「たった今、ひとりの男を殺してきた。しかもその男は私自身だ...」と言ったのだ...。
仮にウィリアム・ウィルソンというこの男は、幼年時代から、同級生を支配して独裁的な権力を振るうサディスティックな性格をしていた。ある日、自分を教師に訴えた級友を校内の隅でリンチにしていたが、その場に突如ひとりの新入生が現われ、リンチを制止した。その生徒はウィルソンと瓜二つの少年で、名前も偶然か同じウィリアム・ウィルソンと名乗った。その日から、ウィルソンは同姓者の存在に絶えず焦慮を覚え、敵意と尊敬、恐怖と好奇心の入り混じった奇妙な不安に悩まされるのだった。
やがてウィルソンは医学校に入学したが、残虐な性癖は一層つのっていた。その夜も通りがかりの娘を多勢で連れ込み、手術台の上に裸で縛りつけて生体解剖を始めた。残酷な狂宴が最高潮に達した時、もう一人のウィルソンが現われ、娘を縛った紐を解いた。娘はあまりによく似た二人を前にしてなおさら驚き、恐怖のあまりメスを持ったウィルソンに倒れ込み、彼女の腹に突き刺さったのだ...。
それからウィルソンは入隊して士官になった。彼は毎晩、賭博場に通い、いかさまトランプの腕を振るった。その夜、初めて会った美しい黒髪の貴婦人に侮辱され、カードの勝負を挑むことになる。ウィルソンは故意に負け続け、酒が十分まわった頃になって賭けを倍にし、得意のいかさまで勝負を逆転した。彼は支配不能な貴婦人に肉体を賭けさせ、その勝負に勝った。ウィルソンは残忍な方法を選び、仲間やボーイたちの前で女を裸にして激しくムチ打ち、苦しみをこらえる姿を満喫した。その時、又しても同じ服装の別のウィルソンが現われてカードのいかさまを暴露した。歓喜の絶頂から屈辱の淵に投げ込まれたウィルソンは怒り、同姓者を背後から短剣で突き刺した。彼は「馬鹿なことを、俺が死ねば、お前も死ぬのだ...」と言いながら石だたみに崩れたのだ...。
告白は終わったが、司祭には何一つ信じられなかった。ウィルソンは教会の高塔に賭け登り、空中へ身を投じ、冷たい石だたみに落下した。不思議なことに、墜落死したウィルソンの脇腹には短剣が突き刺さっていた...。

原題/WILLIAM WILSON
監督/ルイ・マル        (第二部)
原作/エドガー・アラン・ポー
   『ウィリアム・ウィルソン』(第二部)
脚本/ルイ・マル        (第二部)
   クレメン・ビデル・ウッド (第二部)
   ダニエル・ブーランジェ  (第二部)

出演/アラン・ドロン
    :ウィリアム・ウィルソン/将校
   ブリジット・バルドー
    :黒髪の貴婦人


『第三部(現代篇)悪魔の首飾り』
原作の「悪魔に首を賭けるな」はボードレール訳には出てこない。賭博好きの酒飲みダミットが橋の入口の回り戸を通る時。奇妙な木戸番と戸の上をくるりと回転して飛ぶぞと賭ける。だが失敗して墜落し、木戸番の老人はそそくさと近づいて彼の首を持ち去るというポーの短編に大幅にアレンジを加えて、強烈な風刺と病的なまでに鋭敏なイメージを駆使し、現代人の不安と絶望と救済の可能性を探るフェリーニの快心の「キリストの西部劇」です。

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〈ストーリー〉
トビー・ダミットは英国のシェークスピア役者である。かつては華々しい名声に包まれていたが、飲酒癖がたたって1年ばかり仕事はなく、落ち目になっていた。そんな折り、イタリアから映画出演の依頼がきて、その報酬にフェラーリのスポーツカーをもらえるとの話に、スピード狂のトビーは引き受けた。
空港にはカメラマンやジャーナリストが大勢集まり、映画製作者のスパニヤ神父らが出迎えた。トビーはカメラマンのフラッシュに怒りを覚えてトランクをぶつけ、エスカレーターで上に昇った。薄暗い階段の上に着いた時、乳白色のボールがどこからともなく転がってきて、探しにきた少女に手渡した。トビーは透き通る金髪をした少女に奇妙な眼差と微笑みを浴びせられ、思わず恐怖の悪感と不思議な誘惑を覚えた。これはトビーの幻覚だった。
スタジオへ向かう途中、車内で神父たちが現代映画論をまくしたててるのを、トビーは退屈そうに聞き流した。説明によると、映画はキリストを主役とした西部劇で「ドライエルとパゾリーニの中間を行き、少々ジョン・フォードの味を加えた」画期的な映画となる予定だった。途中でジプシーの女占い師に会った時、何故かトビーの手相を見ると逃げ出して行った。
翌日はテレビのインタビューに招かれた。神を信じるかとの質問には「ノー」と答えたが、悪魔はとの質問には「私の悪魔は可愛い少女の姿をしている」と答えた。
夜になってトビーは完全に泥酔していた。パーティでの司会者が声高に彼の番をつげた。彼はよろよろと立ち上がり、マクベスの一節を朗読した。「消えろ、消えろ、束の間の燭火!人生なんて歩いている影だ。舞台の上で大騒ぎ、やがて噂もされなくなる惨な役者だ...」。ステージに崩れるように叫んだ「僕は天才なんかじゃない...もう沢山だ。誰にも用はない」。
会場から逃げ帰るように飛び出して、約束のマセラッティに乗り、夜の道を狂気と情熱にまかせて走り抜けた。途中車を休め、最新型のスポーツカーを愛撫した。再び車に乗ったがいつしかローマへの道を見失っていた。ハイウェイに出て、工事中危険の標識をはねとばした。急ブレーキをかけてみると、橋の中央が崩れ落ちて不気味な口を広げていて、地獄の入口のように深く暗かった。工事人夫は道路わきから回り道を勧めた。その時又しても、夜霧の中に白いボールに戯れる金髪の少女を見た。
「畜生!俺が通れなかったら、悪魔に首をくれてやる!」と叫びながらマセラッティは中央の崩れた橋に突進していった...。

原題/NEVER BET THE DEVIL YOUR HEAD
監督/フェデリコ・フェリーニ   (第三部)
原作/エドガー・アラン・ポー
   『悪魔に首を賭けるな』   (第三部)
脚本/フェデリコ・フェリーニ   (第三部)
   ベルナルディーノ・ザッポーニ(第三部)

出演/テレンス・スタンプ
    :トビー・ダミット/英国のシェークスピア役者
   サルボ・ランドーネ
    :スパニヤ/神父

映画チラシ・上映中パンフレット販売
『映画パンフ・プログラム・チラシ大辞典』
http://www7a.biglobe.ne.jp/~jidai2005/

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