映画「花のあと」パンフ

『山桜』に続く「海坂藩大全」からの映画化第二弾。藤沢周平の珠玉の名作「花のあと」の完全映画化です。
江戸時代。東北の小藩、海坂藩に暮らす組頭の一人娘、以登〈いと〉は今、自らの意志で剣を取り、戦いの場に向かおうとしていた。卑怯な罠に落ちた下級武士の仇討ちを果たすために...。それもたった一度、竹刀を交えた男のために...。
自由恋愛などほど遠い江戸時代、家長制度のしきたりの中で、女たちはある意味で男以上に厳しい人生を歩んでいた。そんな中、自らの運命を受け入れながらも、内に秘めた想いを精一杯、遂げようとする女性像を描いた本作は、ほのかで繊細な恋物語であると同時に、「慎ましくも正しく生きる」という藤沢文学の真髄が見事に投影された物語です。

「日本人が無くしてきたもの」についてよく語られますが、その中の大切なひとつが、「それをやってはいけない」という倫理なのではないか。会津藩の「什〈じゅう〉の掟」にもあるように、あらゆる意味で卑怯なふるまいをしてはいけない、ということ。藤沢文学はそれを声高に叫ぶのではなく、女性剣士の物語の中に慎ましく描かれています。以登は自分の命を賭してまで、卑怯を許さなかったのです...。

『什〈じゅう〉の掟』
一、年長者の言うことには背いてはなりませぬ。
一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ。
一、嘘言を言ふことはなりませぬ。
一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ。
一、弱いものをいぢめてはなりませぬ。
一、戸外でものを食べてはなりませぬ。
一、戸外で婦人と言葉を交へてはなりませぬ。
ならぬことはならぬものです。


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〈ストーリー〉
満開の桜が城の濠沿いに茂り、伸びる枝と薄桃色の花が青空を埋め尽くしていた...。
江戸の昔、東北の小藩、海坂藩にはうらやかな春の季節が訪れていた。花見の客でにぎわう城の二の丸に、以登もまた下女のおふさを伴い花見をしていたが、その目は散りゆく花を惜しみ、どこか寂しげであった。帰宅の刻限が近づき、腰を上げたまさにその時、背後から以登に声をかけたのは、一人の若い侍だった。下級武士のその侍は、羽賀道場の高弟、江口孫四郎である。自らも男に劣らぬ剣を遣う以登にとって、過日、道場を訪れた際に手合わせがかなわなかった江口は、今も忘れることのできぬ名であり、その表情に優しく浮かぶ微笑みに対し、「いつか試合を」との口約束も至極自然のものであった。

数日後、父の甚左衛門〈じんざえもん〉に孫四郎との試合を所望し、これを許される。そして竹刀袋一つを持った孫四郎は寺井家を訪れ、甚左衛門が見守る中、孫四郎と以登は真摯に竹刀を交えるのだ。そこには男女の差別はなく、孫四郎の剣はどこまでも鋭く、以登も攻めの手を休めない。激しい打ち合いが続き、やがて一瞬の隙をつき、孫四郎の竹刀が以登の右小手を打ち据えた。淡い目くらみに襲われた以登を、孫四郎が抱きかかえる。わずかな瞬間だったが、二人には長く続く沈黙の時間だった。間近で孫四郎と目を合わせた以登に明らかに特別な感情が芽生えた時、甚左衛門の「それまで」という声が割って入った。やがて寺井家を後にした孫四郎を見送る以登に、父は告げた。「孫四郎とは二度と会うことはならん」「そなたには婿となる男が決まった身だ」。以登には家同士が定めた、片桐才助という風采が上がらぬ許婚〈いいなずけ〉がいた。そして、孫四郎にも上司が決めた許嫁がいたのだった...。

しばらく月日が過ぎた後、以登は夕食の席で父から衝撃的な事実を聞かされる。内藤家の加世に婿入りし、奏者見習として江戸へ上がっていた孫四郎が、お役目の失態を冒し、切腹したというのだ。納得がいかない以登は許婚の才助に相談し、孫四郎が自害した理由を調べてもらうように頼む。以登は才助に頼るしか方法はなかった。すると才助の調べにより明らかになったことは、実は加世は婚前より御用人の藤井勘解由〈かげゆ〉と密通しており、その勘解由が孫四郎を罠に陥れたのではないかと言うのだった...。

時は流れ、再び海坂藩に春が訪れた。花見の人の群れの中に将来の夫の姿を発見した以登は、その背中を見ながら、穏やかな笑顔で才助の後についていく。「花の季節」を終えた以登の目には、数歩先をのんびりと歩く男の新たな人生が既に頼もしく映っているかのようであった...。

製作/2010年
公開/2010年3月13日 日本映画 107分

監督/中 西 健 二
原作/藤 沢 周 平『花のあと』『海坂藩大全』
脚本/長谷川 康 夫
   飯 田 健三郎
語り/藤 村 志 保

出演/北 川 景 子
    :寺井 以登〈いと〉(甚左衛門の娘)
   甲 本 雅 裕
    :片桐 才助(以登の婚約者)
   宮 尾 俊太郎
    :江口孫四郎/海坂藩下級藩士・「羽賀道場」高弟
   市 川 亀治郎
    :藤井勘解由〈かげゆ〉/海坂藩御用人
   國 村   隼
    :寺井甚左衛門〈じんざえもん〉(以登の父)/
                      海坂藩組頭
   相 築 あきこ
    :郁〈いく〉(以登の母)
   佐 藤 めぐみ
    :津勢〈つせ〉(以登の友人)
   伊 藤   歩
    :加世(江口孫四郎の許嫁)
   柄 本   明
    :永井 宗庵〈そうあん〉
            (甚左衛門の囲碁相手)/医師
   谷 川 清 美
    :おふさ/寺井家下女

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